はじめに
前回の記事では、数の種類として3つの数を紹介しました。
人類が考えた順番に、自然数、整数、有理数を紹介しました。
ここまでは比較的に具体的で理解しやすかったと思います。
この記事では少し抽象的な無理数を紹介します。
実生活で役に立つかは分からないですが、知っておいて損はないと思います。
また、ピタゴラスという数学者のエピソードも出てくるので最後まで読んでいただけると幸いです。
無理数が発見された経緯
無理数が発見されたのはピタゴラスの定理が発端であるといわれています。
ピタゴラスの定理は三平方の定理とも呼ばれ、多くの人が知っている定理の1つで、
直角三角形の辺の長さの関係は a^2 + b^2 = c^2
になるという定理です。
この定理が正しいことや証明などの難しい話は一旦おいておくとして、
いくつかの疑問が生まれると思います。
「 a
と b
が1の時、 c
の値はいくつになるのだろうか?」というのも
自然と出てくる疑問の1つです。
この c
の値はみなさんご存知の√2(2の平方根)です。
当時は無理数は発見されておらず、すべての数は有理数であり、
2つの整数の比で表されると信じられていたので、正確には
「 c
はどんな整数の比で表すことができるのだろう?」でした。
しかしこのような整数の比はいくら試しても見つかりませんでした。
99/70
や 239/169
などの分数がかなり近い値になることは知られても、
ぴったり一致することはありませんでした。
そしてついに2の平方根は整数の比では表せないことが証明されました。
2の平方根が無理数であることの証明
この証明は結構有名でいくつかの方法がありますが、
ここでは背理法を用いた証明を紹介します。
背理法は、ある前提で話を進めていくと途中で矛盾が生じることを示し、
最初にたてた前提が誤っていたということを証明する方法です。
なのでここで「2の平方根は有理数である」という前提で話を進めます。
2の平方根は有理数であるため、適当な整数 a, b を使って √2 = a / b と表します。
この時 a, b は有理数を表す2つの整数なので、互いに素となります。
(互いに素は、公約数を持たないということ)
両辺を2乗して整理すると 2 * b2 = a2 となります。
ここで a, b は互いに素であるため、この方程式を満たす a, b の組はありません。
ということでやはり矛盾が生じたので、「2の平方根は有理数である」という
前提が間違っており「2の平方根は無理数である」となります。
ピタゴラスについて
上記のような証明で2の平方根が有理数でないということが明らかになるのですが、
これを発見したのはピタゴラス教団の一員であったとされています。
ピタゴラスは当時優秀な学者で、数学に限らず音楽や天文学にも精通したとされますが、
その優秀さに惹かれた門下生を集め、ピタゴラス教団という集団を設立していました。
ピタゴラスは宇宙のすべては数で表現できるとし、その数は全て有理数であるとしました。
あらゆる数は整数の比で表すことができる美しいものであると信じていました。
しかしそのピタゴラス教団の一員が三平方の定理を発見し、
そこから有理数でない数が見つかってしまうという皮肉の展開を迎えます。
無理数の存在を発見したのはヒッパソスという名の数学者で、
無理数を発見してしまったために教団員に殺されてしまったという言い伝えがあるようです。
(この言い伝えの真偽のほどは正しいかどうか曖昧な部分もあるということのようです)
さいごに
この記事では、身近な三平方の定理の話から、
2の平方根が有理数ではなく無理数であるという話を紹介しました。
有理数か無理数かというのは現実の世界でそこまで意識する場面はないのですが、
プログラマの方々には知っておくと得する場面はあるかもしれません。
(計算誤差をなくすことは理論上どこまで可能か?などを考える際に)