数の種類 #1(自然数、整数、有理数)

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はじめに

みなさんは生きていて色々な場面で数を扱う場面があると思います。
それは表計算ソフトの中であったり、学生だった頃の数学のノートの中であったり、様々だと思います。
例としていくつか書き出してみます。

  • 1
  • 2
  • 3
  • 0
  • -1
  • 1.5
  • 1/3

他にも色々思いつく数があると思いますが、この記事ではこれぐらいにしておきます。

これらは数の種類によって分類することができます。

自然数や整数は聞いたことがあったり、意味を知っている方もいると思います。
有理数はあまり聞き馴染みがないという方も多いのではないでしょうか。
また、「1.5は小数で1/3は分数だろう」と言う方もいらっしゃると思いますが、
小数や分数は数の記法(数を文字で書き表す方法)の名前なので、
今回紹介したい数の種類でいうと有理数であるという整理になります。

また、気づいた方もいるかもしれませんが、
有理数は整数と自然数を含み、整数は自然数を含むという包含関係になっています。
図にすると次のようになっています。

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この記事で紹介したいのは、数の中でも初期に考えられた、下記の3種類です。
* 自然数
* 整数
* 有理数

他にも無理数、実数、複素数、などなどその他の分類も存在しますが、この記事では紹介しません。
無理数、実数、複素数についてはいつか別の記事で紹介したいと思っています。
その他については今の自分の理解が十分でないので、少なくともしばらくは紹介しないと思います。

この記事では数の種類を順に紹介するにあたって、数に対してどのような計算を行うことができるかを考えていきます。
そうすることで、人が数について考えてきた歴史が分かりやすくなると思います。

この記事の内容は、覚える必要はまったくない筆者は考えていますが、
数学の考え方や、なにかの概念を拡張する際の方針のようなものを感じて頂ける内容になっていると思います。

では早速、数の種類を紹介していきたいと思います。

自然数

最初は自然数です。人類が最初に使い始めた数です。
何かを数え上げる時に、自然と口に出すということで自然数と呼ばれます。
数学の教科書などでは自然数全体をよく N と表現します。

N = { 1, 2, 3, ... }

文脈によって自然数にゼロを含む場合もありますが、本記事では含まないものとします。

自然数を人類が扱っていた証拠は紀元前に遡って見つかっているそうです。(思ったよりも古い!)
最初は骨や石に傷をつけることで何かを数えていたようです。
太陽が登った数(原始的な暦?)や、狩った動物の数などでしょう。
これが人類が初めて使い始めた数、自然数です。

さて、ここで自然数に対して四則演算が可能であるか試してみたいと思います。
人類が数を使う以上、計算は絶対にすることになります。
2つの自然数に対して四則演算を行って、その答えは自然数になるでしょうか。

もし仮に、二つの自然数に四則演算を行って自然数にならなかったらどうでしょうか。
僕たちが自然数以外の数を知らないというていで考えると、それは困ったことです。
特定の条件で計算ができない場合もあるとなると、考えるのが面倒になる場面も多いはずです。

自然数に対して可能な四則演算は、和(足し算)と積(掛け算)のみになります。
差(引き算)の場合、引く数が引かれる数以上の場合、答えがゼロ以下になってしまい、答えが自然数ではなくなります。
(例えば 1 - 2 は負の数になり、2 - 2はゼロになってしまうので答えが自然数ではありません) 商(割り算)の場合、割る数が割られる数よりも大きい場合、答えが1より小さくなってしまい、答えが自然数ではなくなります。 (例えば 1 / 2 は自然数ではありません)
2つの自然数の差や商が自然数ではないので、自然数に対して差や商は計算できないという結論になります。

特に差が計算できない場合について考えることで、次のような疑問が生まれます。
引く数のほうがが大きい時は「計算できない」のではなくて
「実は1より小さい数もあるんじゃない?」という疑問が生まれ、自然数は拡張されることになります。

整数

自然数に対して差を考えようとした結果、「1より小さい数」を追加した整数の概念が生まれることになりました。
自然数にマイナスをつけた「負の数」と、「ゼロ」が追加されました。
整数全体の集合をよく Z と表現します。

Z = {..., -2, -1, 0, 1, 2, 3, ...}

整数に対してどの四則演算が可能であるか考えてみます。
和、差、積が可能で、自然数ではできなかった差が計算できるようになっています。
また、積の演算についても少し拡張がおこなわれています。
片方のみが負の場合その積も負になる、両方が負の場合その積は正になる、というように拡張されています。

商(割り算)の場合、割る数の絶対値が割られる数の絶対値よりも大きい場合、答えが整数ではなくなります。
(例えば 1 / 2 は整数ではありません)
2つの整数の商が整数ではないので、整数に対して商は計算できないという結論になります。

自然数が整数に拡張されたのと同様に、次のような疑問が生まれます。
割る数の絶対値が割られる数の絶対値よりも大きい場合、「計算できない」のではなく、
「0と1の間にも数があるんじゃない?」という疑問が生まれ、整数は更に拡張されることになります。

有理数

整数に対して商を考えようとした結果「整数とその隣の整数の間にも数がある」
という考えを追加した有理数の概念が生まれることになりました。

整数と隣の整数の間にある数は「2つの整数の比(商)」であることとされました。
(例えば1と2の間には1/2, 1/3, 3/5などの有理数が含まれます)
有理数全体をQで表現することが多いです。

Q = { a / b | a, b ∈ Z }

上記の式は、次のように読むことができます。

  • Qは集合である(Q = {})
  • Qの要素は a / b である
  • a, bは整数である(a, b ∈ Z)

また、序盤に少し紹介した「有理数が整数と自然数を含む」ということを説明します。
下記2点から、有理数が整数や自然数を含むことがわかります。

  • 特にaがbの整数倍である時、a/bは整数になる
  • 特にa, bが自然数で、aがbの自然数倍である時、a/bは自然数になる

有理数を表記する有名な方法に、小数と分数があります。
有理数を小数で表現する時、有限小数循環小数になります。
(少数で表記した際に無限に続き、循環を持たないようなルート2や円周率などの数は有理数ではありません)

有理数に対して四則演算が可能か考えてみます。
和差積商すべての四則演算が可能です。
自然数から始まり、四則演算ができるよう拡張されてきたましたが、
自然数→整数→有理数と拡張されてきた結果、四則演算が可能になりました。

ゼロ除算については特殊な例になりますが、下記の記事で紹介しているので
興味があったら確認してみてください。

blog.shogonir.jp

さいごに

今回は自然数から始まり、四則演算を可能にするために考えられた整数と有理数を紹介しました。
今までなんとなく見ていた数たちが、これからは違って見えるかもしれません。

また、自然数→整数→有理数の拡張の過程は、数学をする人の考え方が詰まっていると思います。
何か困った際に疑問を見つけ、それを解決できるように概念を拡張していきます。
今回の例でいうと、自分が知っている数に対して計算ができなくて困ります。
そこから、実は自分たちが知らない数が存在するのではないかという疑問を考えます。
そしてその疑問から新しい概念を定義します。

さて今回は自然数と整数と有理数を紹介して、四則演算はできるようになりました。
しかし面積などを考え出した人類は、2乗という計算に出会い、また困ってしまいます。
x2 = 2の解であるルート2は、整数の比で表すこができず、有理数でないことが分かっています。
また、x2 = -1の解も有理数ではないことが分かっています。
これらの問題を解消するには、無理数複素数という種類の数が必要になります。
それらの話は、別の記事で紹介したいと思います。